ヘリコバクター ピロリ感染症

ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)は、人の胃の中に生息している細菌です。ピロリ菌は幼少時に感染し、持続的な胃粘膜の炎症から慢性萎縮性胃炎を引き起こします。また、ピロリ菌感染は胃潰瘍や十二指腸潰瘍を引き起こすため、胃潰瘍や十二指腸潰瘍と診断された方のピロリ除菌治療は広く行われています。さらには、ピロリ菌感染があると胃がんになりやすいこともわかり、1994年には国際がん研究機関(IARC)がピロリ菌をGroup 1の発癌物質と認定(モノグラフvol.61)され、ピロリ菌除菌治療で胃がん発症リスクを下げることができることもわかり、2013年2月からは、“胃カメラで胃炎が確認された”ピロリ菌感染胃炎の方のピロリ除菌治療にも保険が適用されました。


ピロリ菌検査(保険適用)ピロリ菌検査には、吐く息を採取する検査(尿素呼気試験)、血液検査(血清抗体検査)、尿検査(尿中抗体検査)、便検査(便中抗原検査)、胃カメラを用いた検査(迅速ウレアーゼ試験、鏡検法)があります。当院では、尿素呼気試験、血清抗体検査、迅速ウレアーゼ試験、鏡検法を行っています。
ピロリ菌除菌治療(保険適用)保険が適用された治療として、一次除菌療法と二次除菌療法があります。ともに2種類の抗菌薬と1種類の胃薬の計3種類(錠剤数は1回5-6錠)の薬を1日2回、7日間内服します。一次除菌療法で効果がなかった場合に二次除菌療法を行います。


ピロリ菌除菌治療の実績(2012年~2016年)当院では、2012年に61例(一次除菌48例、二次除菌13例)、2013年に107例(一次除菌84例、二次除菌23例)、2014年に104例(一次除菌79例、二次除菌25例)、2015年に89例(一次除菌70例、二次除菌19例)、2016年に75例(一次除菌71例、二次除菌4例)の除菌治療を行いました。成否が判明している一次除菌治療の成功率は76.6 %(209 / 270)、二次除菌治療の成功率は97.0 %(65 / 67)で、さまざまな施設からの報告と同程度の成功率です。

また、既存薬よりも高い除菌成功率が期待されるボノプラザン(商品名:タケキャブ)が2015年2月に発売されました。当院でも2015年中ほどよりボノプラザン(商品名:タケキャブ)を用いた除菌治療を行っており、その一次除菌治療の成功率は96.3 %(77 / 80)(既存薬での一次除菌治療の成功率は69.5 %)と既存薬と比較して明らかに良好な結果が得られています。